研究データの3-2-1バックアップ入門|大学規程を守って備える

研究データのバックアップでは、コピーを増やす前に確認すべきことがあります。保存先が所属大学や研究科の規程で認められているか、個人情報や共同研究先の機密情報が含まれていないか、誰が復元を担当するかです。

一般的な3-2-1方式は、原本を含む3つのコピーを2種類の媒体に分け、そのうち1つを別の場所へ置く考え方です。ただし、3-2-1は大学規程や倫理審査、共同研究契約より優先されるルールではありません。この記事では、所属先の規程を守りながら、今日確認できる順番を整理します。

最初に研究データを分類する

同じ研究室のデータでも、扱える保存先は同じとは限りません。まず、対象データを次のように分けます。

  • 公開済みの論文や公開データ
  • 研究室内だけで共有するデータ
  • 未公開の実験・解析データ
  • 個人情報を含む調査・実験データ
  • 共同研究先や企業から受け取った機密情報
  • 倫理審査や利用申請の条件が付いたデータ

個人情報や制限付きデータは、個人用クラウドやUSBメモリへ自己判断で複製しません。所属大学・研究科の情報セキュリティ規程、倫理審査の研究計画書、共同研究契約、研究資金のデータ管理条件を確認します。分からない場合は、指導教員、研究データ管理責任者、情報担当部署へ保存先を確認してください。

3-2-1方式を研究データへ当てはめる

規程上利用できる保存先が分かったら、三つの数字へ当てはめます。

3:原本を含む3コピー

作業中の原本に加えて、バックアップを2つ用意します。同じパソコン内でフォルダを三つ作っても、端末の故障や盗難で同時に失われるため、3コピーとは考えません。

研究用端末そのものの故障・紛失対策も含めて見直す場合は、研究用ノートPCの選び方も併せて確認してください。

2:2種類の媒体や保管方式

一つの機器やサービスに障害が起きても、別のコピーから復元できる構成にします。たとえば、大学が管理する研究用ストレージと、規程で許可された別のバックアップ先を組み合わせます。具体的な製品やサービスではなく、同じ事故で同時に失われにくいかを確認します。

1:1コピーを別の場所へ

火災、浸水、盗難など、同じ場所で起きる事故に備える考え方です。ただし「別の場所だから個人クラウドへ置く」という意味ではありません。大学が提供する遠隔バックアップや、所属先が許可した保管先から選びます。

同期とバックアップを分けて考える

複数端末で同じファイルが見えるだけでは、十分なバックアップとは限りません。誤って削除したファイルや壊れたファイルが、ほかの端末にも同期される場合があるためです。

利用する保存先について、次の点を確認します。

  • 過去の版へ戻せるか
  • 削除後に復元できる期間はあるか
  • 自動バックアップの対象と頻度は何か
  • 障害時の復旧を誰へ依頼するか
  • 利用終了や修了後にデータがどう扱われるか

「保存できた」ではなく、「必要な時点のデータを復元できる」ことを基準にします。

バックアップ頻度を決める

頻度は、失ってよい作業量から逆算します。具体的な期間は契約や所属先の条件を確認してください。反対に、原本から再生成できる一時ファイルまで同じ頻度で保存すると、容量や管理作業が増えます。

次の三つへ分けると決めやすくなります。

  1. 再取得できない生データ
  2. 再作成に時間がかかる解析データやコード
  3. 原本から再生成できる一時ファイル

生データを最優先にし、取得直後に許可された保存先へ移します。解析コード、条件、README、ファイル名の規則も一緒に残すと、データだけがあって復元できない状態を防げます。

さらに、生データ取得直後、クリーニング前、解析前など、戻る可能性のある節目では上書きせず変更前の版を残します。どの版を残すかは研究室の運用に合わせ、保存日時と変更内容が分かる名前にしてください。PDFや関連資料の命名を整える場合は、論文PDFのファイル名とフォルダ整理も参考になります。

復元テストまでを一つの作業にする

バックアップが存在しても、開けなければ研究を再開できません。定期的に小さなファイルを選び、元の場所とは別の一時領域へ復元して確認します。

  • ファイルが開くか
  • 必要な版を選べるか
  • 解析に必要な付属ファイルがそろっているか
  • 権限を持つ担当者が復元できるか
  • 復元手順が研究室内で共有されているか

本番データを上書きしないよう、復元先と確認手順は事前に決めます。暗号化した媒体を使う場合は、鍵やパスワードを一人だけが知る状態も避け、所属先の方法で安全に引き継げるようにします。

研究データバックアップ点検表

次の項目を本文内の点検表として使ってください。

  • [ ] データの機密性と利用条件を分類した
  • [ ] 所属大学・研究科、倫理審査、共同研究契約を確認した
  • [ ] 利用を許可された保存先を確認した
  • [ ] 原本を含む3コピーがある
  • [ ] 同じ障害で失われにくい2種類の保管方式に分けた
  • [ ] 許可された別拠点に1コピーがある
  • [ ] バックアップの頻度と担当者を決めた
  • [ ] 版管理、削除後の復元、保存期間を確認した
  • [ ] 復元テストを行う日を決めた
  • [ ] 修了・異動時の引継ぎと廃棄方法を確認した

一つでも判断できない項目があれば、保存先を増やす前に指導教員や情報担当部署へ確認します。

まとめ

研究データの3-2-1バックアップは、3コピー、2種類の媒体や保管方式、1コピーを別の場所へ置く考え方です。しかし、最初に行うのはコピーではなく、データの分類と所属先ルールの確認です。

許可された保存先だけを使い、頻度、責任者、復元方法まで決めてください。今日の作業は、重要な研究データを一つ選び、点検表の10項目を確認するところから始められます。

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